獣医師の転職先で、意外と見落とされがちなのが地方公務員です。
「公務員試験は難しいんじゃないの?」「年齢的にもう無理でしょ?」。
そう思っている方も多いはず。
でも結論から言うと、それは誤解です。
地方公務員獣医師は、獣医師業界の"駆け込み寺"と言っていいくらい、転職のハードルが低い職場です。
ワークライフバランスを重視している獣医師にとって、知っておいて損はない選択肢です。
📌 この記事の結論
- 採用ハードルが低い(60歳までOK・面接のみの自治体も)
- 理由は全国的な獣医師不足(半分が小動物臨床に偏っている)
- 残業少なめ・休みやすいでワークライフバランス◎
- ただし配属は運次第、本庁・家畜疾病発生時は残業も
結論:公務員は「いつでも戻れる」駆け込み寺
「公務員」と聞くと難関試験のイメージがあるかもしれません。
でも地方公務員の獣医師職は、まったくの別世界です。
年齢制限:60歳までOKの自治体も
民間だと「30代後半からは厳しい…」とよく聞きます。
でも地方公務員獣医師は60歳まで応募可能な自治体も普通にあります。
何歳になっても、獣医師資格さえあれば転職のドアが開いています。
試験:基本なし、面接のみで採用される自治体が多い
公務員試験の分厚い問題集は、獣医師職には基本的に不要です。
履歴書と面接だけで採用が決まる自治体も珍しくありません。

ワン
面接だけで公務員になれるって、本当なんですか?

ゆっけ
本当です、筆記があっても専門試験ではなく簡易な常識テスト程度のことも。
「公務員試験のために半年勉強しないと…」というプレッシャーは、ほぼ不要です。
なぜここまでハードルが低いのか。
理由は単純で、全国的に獣医師が圧倒的に足りていないからです。
特に地方では、求人を出しても応募者ゼロも珍しくありません。
だから自治体側も「とりあえず獣医師資格を持っている人なら来てほしい」というスタンスになります。
理由:獣医師が「小動物臨床」に偏りすぎているから
このハードルの低さの根拠を、農林水産省の公式データで確認します。
獣医師は2年に1度、獣医師法第22条に基づいて勤務状況を国に届出する義務があります。
最新の令和6年(2024年)データを見ると、偏りが一目瞭然です。
| 職域 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 小動物診療(犬猫) | 16,717人 | 約47% |
| 都道府県・市町村職員(公務員) | 8,137人 | 約23% |
| 製薬・飼料等企業 | 2,727人 | 約8% |
| 産業動物診療 | 1,762人 | 約5% |
| 国家公務員 | 549人 | 約2% |
| その他(教育・民間団体・農協など) | 5,527人 | 約15% |
出典:農林水産省「獣医師の届出状況(令和6年)」 獣医事従事者総数:35,419人

ワン
獣医師の半分が小動物臨床にいて、だから公務員は人手不足なんですね。

ゆっけ
そういうこと、ほぼ半分が小動物臨床に集中している一方で、地方公務員と産業動物は明らかに人手不足なんです。
だから、採用のハードルがここまで下がります。
国もこのデータを基に確保対策を進めているくらい、構造的な不足が続いています。
正直に言うと、「変わった人」も一定数います
ここからは、他の転職サイトでは書かれない本音の話です。
採用ハードルが低い=いろんな人が入ってくる、ということでもあります。
公務員獣医師の世界にはちょっと個性的な…いやかなり個性的な人も一定数います。
悪口を言いたいわけではなく、業界あるあるとして知っておいてほしい事実です。
「公務員獣医師は人格者ばかり」という幻想は、持たないほうがギャップが少ないです。
傾向として面白いのは、若い人たちはまともな人が多いこと。
個性派のイメージは年配層のほうです。
おそらく、優秀でまともな人ほど早めに転職して別のキャリアを選ぶ。
その結果、長く残った層に個性派が多くなるのでは、と推測しています(あくまで個人の感想です)。
ワークライフバランス重視ならハマる理由
ここが、この記事を読んでいる方にとって一番大事なポイントだと思います。
① 残業がほぼない
緊急対応がある自治体もありますが、基本的に定時で帰れます。
夜中の呼び出しも土日出勤も、ほぼありません。
② 有給・育休・介護休業がしっかり取れる
休暇制度が法律で守られているのが、公務員の強みです。
「申請しづらい雰囲気」もほとんどありません。
たとえば子どもの保育園から発熱の呼び出しがあれば、時間休を取って迎えに行ける。
これは民間ではなかなか難しい働き方です。

ワン
動物病院だと、急に休むのは難しそうですもんね。

ゆっけ
動物病院は少人数で回していることが多いので、急な休みは本当に気を遣うんです。
その点、公務員は組織が大きいぶん、休みやすい環境が整っています。
③ 転勤はあるが範囲が読める
異動はありますが、基本的に同じ自治体内です。
東京から札幌へ、みたいな転勤はありません。
だから家族の生活設計が立てやすいです。
面接で必ず確認すべきポイント
採用ハードルが低いぶん、入ってから「思ってたのと違う…」となるケースもあります。
面接時には、最低限このポイントを聞いておきましょう。
① 配属先の業務内容を理解しておく
公務員獣医師の配属先は多様です。
仕事内容は別記事で詳しく書いています。
- 保健所(狂犬病予防員・食品衛生など)→ 保健所に勤める公務員獣医師の1日(狂犬病予防員編)
- 家畜保健衛生所(家畜衛生・防疫業務)→ 家畜保健衛生所に勤める公務員獣医師の1日
- 食肉衛生検査所(と畜検査)→ 食肉衛生検査所に勤める公務員獣医師の1日
- 県庁・市役所本庁(行政事務)→ 全体像は公務員獣医師になるにはで
そして残酷な現実として、希望配属を伝えても、希望通りになることはほぼありません。
配属は完全に運です。
私も最初は家畜保健衛生所を希望していましたが、保健所配属になりました。

ワン
希望が通らないのはしんどいですけど、事前に知る方法はあるんですか?

ゆっけ
採用説明会で「配属先の希望はどれくらい通りますか?」と聞いてみるといいですよ。
正直に「なかなか通りません」と言ってくれる担当者もいます。
入ってからのギャップを減らすためにも、事前に確認しておきましょう。
② 異動のサイクルと範囲
何年ごとに異動があるか、範囲はどのエリアまでか。
家族の生活設計に直結するので、曖昧にしないでおきましょう。
③ 残業の実態(部署による違いを忘れずに)
「公務員=残業ほぼなし」は、配属先による部分が大きいです。
特に注意したいのが2つ。
1つ目は鳥インフルエンザ・口蹄疫など家畜疾病が発生した場合。
発生地域では家畜保健衛生所を中心に、昼夜を問わない激務になります。
2つ目は本庁勤務の場合。
都道府県庁の本庁配属になると残業が当たり前で、月40時間程度は覚悟したほうがいいでしょう。
しかも部署は選べません。
だから「最悪このケースでも受け入れられるか?」を自分に問いながら受けるのが大事です。
それでも、民間の臨床職よりはトータルで楽な職場環境です。
④ 給与・手当の詳細
基本給だけでなく、獣医師手当・地域手当・住居手当の有無を確認。
特に福岡県・徳島県は「特定獣医師給料表」で給与が高めです。
公務員獣医師になる方法を体系的に知りたい方へ。
他の転職先と比べたら、地方公務員はどこに位置する?
獣医師の主な転職先を、ワークライフバランス・給与・採用ハードルの3軸で比較するとこうなります。
| 転職先 | ワークライフバランス | 給与 | 採用ハードル |
|---|---|---|---|
| ⭐ 地方公務員 | ◎ | △(手当次第で○) | ◎(低い) |
| 製薬会社 | ○ | ◎ | △(やや高い) |
| 食品関連企業 | ○ | ○ | △(やや高い) |
| 産業動物獣医師 | △ | ○ | ◎(低い) |
| 一般開業医(小動物) | △ | ○ | ◎(低い) |
地方公務員は「ワークライフバランス重視+採用ハードルが低い」のが最大の強みです。
給与は手当次第で大きく変わるので、希望自治体の獣医師手当・地域手当は必ずチェックしてください。
ちなみに:主な公務員獣医師職の比較
| 職場 | 1日の動き方 | 残業・緊急対応 | 給与 |
|---|---|---|---|
| 食肉衛生検査所 | ルーティン(同じ場所) | ほぼなし | 公務員獣医師で最高水準 |
| 保健所(狂犬病予防員) | 事務作業+外回り | 苦情対応など、少なめ | 標準 |
| 家畜保健衛生所 | 現場・検査室・デスク | 鳥インフル等で激変、通常は少なめ | 2番目に高い |
転職先として検討するときは、どの職場に配属されるかで働き方が大きく変わることを覚えておいてください。
まとめ:選択肢の一つとして「公務員」を持っておく価値
最後に、もう一度結論です。
- 採用されやすく、年齢の壁も低い
- ワークライフバランスが取りやすく、長く安定して働ける
- ただし配属は運次第、本庁・家畜疾病発生時は残業もある

ゆっけ
地方公務員獣医師は花形ではないけれど、いつでも応募できるという安心感がある——これがまさに「セーフティネット」と呼ぶ理由です🐾
「臨床で疲れた」「家族との時間を増やしたい」「もう転職活動に体力を使いたくない」。
そんな気持ちが少しでもあるなら、有力な選択肢の一つとして持っておいて損はありません。
※ 採用条件・試験内容・給与体系は自治体・年度によって大きく異なります。最新情報は各自治体の採用ページで必ず確認してください。




