
ワン
ゆっけさん、「1日シリーズ」って産業動物・保健所・家保・食検とありますけど…いちばん獣医師が多い「動物病院」の1日が、まだ無くないですか?

ゆっけ
鋭い(笑)、先に正直に言うと私自身は小動物臨床の経験がありません(公務員→産業動物のキャリアです)。
そこで今回は、動物病院で働く同期・友人に「ある平日の1日」を細かく取材しました。
その声をもとに再構成した、一次診療(街の動物病院)のリアルな1日です。
📌 この記事の結論
- 動物病院の1日は拘束12〜13時間、見えない仕事がぎっしり
- 朝の入院当番→午前診察→昼休み=手術→夕方ラッシュ→夜の残務
- 春(予防シーズン)は件数1.5〜2倍でパンクする
- 経験量はトップクラス。でも労働×給与は病院差が極端
なぜ、わざわざ「1日」を公開するのか。
理由は、求人票や説明会では「実際の時間の流れ」までは分からないから。
朝から夜までの流れを見るのが、その仕事との相性を知るいちばんの近道です。
まず数字で全体像をつかむ
取材して最初に驚いたのがこれ。
「診察時間」の外に、見えない仕事がぎっしり詰まっているんです。
順番に見ていきましょう。
タイムスケジュール
7:30|出勤・入院当番(始業前の見えない仕事)
始業は9時。
でも若手獣医師の朝は、もっと早い。
入院動物の点滴・投薬・採血・ごはん・散歩を、診察が始まる前に終わらせる必要があるからです。
取材した友人は、始業9時の病院に毎朝7時半に出勤しています。
理由を聞くと「入院の子の様子が朝イチで変わってることもあるから、結局早く行くしかない」と。
この時間、タイムカードに載らない病院も少なくないのが業界の正直な現実です。
9:00|午前の診察(予防・体調不良がどっと来る)
午前は、来院数がいちばん多い時間帯。
ワクチン・フィラリア予防・ノミダニ予防、「昨日から吐いてる」「下痢が止まらない」、皮膚のかゆみ、シニアの定期チェックなど。
1人で午前だけで10〜20件診ることもあります。
診察→説明→カルテ→次の患者…の繰り返しで、気づいたら一度も座らず昼になっているそうです。

ワン
動物だけじゃなくて、飼い主さんへの説明もあるんですもんね…。

ゆっけ
そう、動物を診る時間と同じくらい人と話す時間が長いのが小動物の特徴です。
「仕事の8割は人間相手だった」と笑う友人もいるくらいです。
12:00|「昼休み」という名の手術・検査タイム
午前の診察が終わると、待っているのは休憩…ではなく手術です。
避妊・去勢、歯石除去・抜歯、腫瘤の切除、エコー・レントゲンなどの精密検査。
外来を止められる昼が、唯一まとまったオペの時間。
「昼休み=手術時間」が小動物臨床の常識と聞いて、産業動物育ちの私は正直驚きました。
14:30|遅い昼食
手術が終わってから、ようやく昼食。
コンビニのおにぎりやパンを、休憩室でさっと済ませる人が多いそうです。
午後の診察まで、30分あれば良いほう。
手術が長引けば、昼食抜きでそのまま午後診という日もあります。
16:00|午後の診察(夕方ラッシュ)
仕事帰りの飼い主さんが集中する17〜19時が、1日で2番目の山場です。
「会社帰りに連れてきました」が続々と来て、日中に容態が悪化した子の駆け込みもこの時間帯。
予約はあってないようなもので、読めない混み方をするのが夕方だそうです。
19:00|診察終了——でも仕事は終わらない
閉院後にも、仕事は残っています。
入院動物の夜の処置・点滴交換、カルテ記入、検査結果のまとめ、飼い主さんへの電話報告、院内の片付け・器具の滅菌。
20:30|退勤
すべて終えて、ようやく退勤。
朝7時半から数えると、拘束はおよそ13時間。
これが「特別に忙しい日」ではなくわりと普通の平日だというのが、取材していちばん重かった事実です。
しかも、家に帰っても入院の子のことが頭から離れない。
「休みの日にスマホが鳴ると身構える」という話は、複数の友人から聞きました。
季節で変わる「1日の景色」
どの友人も口をそろえるのが「春はやばい」。
予防シーズンの動物病院は、1日の診察件数が普段の1.5〜2倍になるそうです。
向いている人・向いていない人
取材した同期・友人たちの声をまとめると、こうなります。
向いている人
- 動物も人(飼い主さん)と話すことも好きな人
- 診察・手術・検査と、マルチタスクをこなせる人
- 一頭一頭の回復・成長を長く見届けたい人
- チームで働くのが好きな人
向いていない人
- 労働時間・給与のバランスを最優先したい人
- 人とのコミュニケーションに強いストレスを感じる人
- 自分のペースで黙々と働きたい人
- 「動物が好き」だけが理由の人(好きすぎると、看取りが辛い)
最後の1つは、友人の言葉をそのまま借りました。
「動物が好きで入った人ほど、命の現場の重さに削られる」——きれいごと抜きの、現場の声です。
他の転職先と比べたら、小動物臨床はどこに位置する?
| 転職先 | ワークライフバランス | 給与 | 採用ハードル |
|---|---|---|---|
| ⭐ 一般開業医(小動物) | △(長時間拘束) | ○(病院差が極大) | ◎(低い) |
| 産業動物獣医師 | △(当直あり) | ○(2年目以降アップ) | ◎(低い) |
| 地方公務員 | ◎ | △ | ◎(低い) |
| 食肉衛生検査所(公務員) | ◎ | ◎ | ◎(低い) |
| 製薬会社 | ○ | ◎ | △(やや高い) |
小動物臨床は「経験を積める量」では間違いなくトップクラスです。
症例数・手術数・飼い主対応——ここで数年鍛えた経験は、その後どのキャリアに進んでも武器になります。
一方で、労働時間と給与のバランスは、病院によって極端に違います。
だから、就職・転職の前には必ず見学を。
1日を振り返って
朝7時半の入院当番から夜の電話報告まで——動物病院の1日は、外から見えるよりずっと長くて、ずっと濃い。
それでも取材した友人たちは「しんどいけど、回復して退院していく瞬間がぜんぶ持っていく」と笑っていました。

ワン
しんどさの先に、ちゃんと「よかった」があるんですね。

ゆっけ
その「よかった」の話は、シリーズの小動物編にまとめてあるので、今日の記事とセットで読むと影と光の両方が見えるはずです🐾 ▶ 小動物臨床でよかったこと
※ 本記事は同期・友人への取材をもとに構成した一例です。病院の規模・診療方針・地域によって1日の流れは大きく異なります。




