
ゆっけ
今回は、私が九州地方で産業動物獣医師として働いていた頃の、ある平日の1日をそのまま公開します。
きれいな仕事自慢ではありません。
悪露のにおいが染みついたつなぎのまま昼飯を食う話まで、現場のリアルをそのまま書きました。
産業動物への転職を考えている方、ぜひ読んでみてください。
📌 この記事の結論
- 産業動物の1日は8:30〜17:15・往診8〜10件・走行100km
- 移動はプロボックス、昼食は車内飯+15分の昼寝
- 当直は分担制で、当直じゃない日は呼び出しゼロ
- 体はキツいが、「この手で命に関わる」手応えがある
なぜ、わざわざ「1日」を公開するのか。
理由は、求人票や説明会では「実際の時間の流れ」までは分からないから。
朝から夜までの流れを見るのが、その仕事との相性を知るいちばんの近道です。
まず数字で全体像をつかむ
文章の前に、1日のスケール感を数字で。
数字だけ見れば、ハードに感じないかもしれません。
ただ、1件ごとに着替えて、泥にまみれて、また移動して——の繰り返し。
夕方には、体力がガス欠になります。
タイムスケジュール
8:30|出勤・準備
診療所に出勤したら、まずその日の分担決めです。
誰がどのエリアを担当するか確認したら、プロボックスに薬を積み込みます。
注射薬・補液・器具類——手際よく積まないと、現場で「あれがない」となる。
地味だけど、大事な作業です。

ゆっけ
プロボックスは産業動物獣医師の相棒で、ここまで現場に最適化された商用車、他にないと思います。
トランクが広くて段差が少なく、補液の段ボールがちょうど収まるんです。
9:30|診療開始(緊急性の高い順に巡回)

往診のイメージ。1件ごとに農場を回り、車には診療道具一式を積んでいます
急性乳房炎などの緊急案件から、順番に回ります。
特に「牛が立たない」という連絡が来たら最優先。
起立不能は原因が複数あって、判断も処置も早さが命です。

ゆっけ
本音は効率よく回りたい、でも「とりあえず急いで来て!」と言う農家さんに限って、めちゃくちゃ遠い場所にいたりするんですよね…。
午前中に4〜5件回ることもあれば、起立不能1件に2時間かかって午前はそれだけで終わる、なんて日もあります。
12:30|昼食・昼寝
往診車の中で昼食をとります。
外食は基本ムリ。
汗だくのつなぎ+悪露や膿汁のにおいが染みついた状態でお店に入るのは、他のお客さんに申し訳ない。
なので、車内飯が定番です。

お昼は車内飯+15分の昼寝が定番でした
昼食後、私は必ず昼寝をしていました。
キンキンに冷えたプロボックスのシートで、15〜20分のうたた寝。
これが本当に最高なんです。

ゆっけ
「サボってる」じゃなくて「回復してる」です、午後の診療の質を保つために必要な投資、本気で言ってます。
15:30|帰所・カルテ入力・補充作業
午後の診療が一段落したら、診療所に戻ってカルテ入力。
往診中にメモした内容を清書するイメージです。
その後は薬の補充。
特に夏場は、補液の消耗が桁違い。
プロボックスのトランクに補液をぎっしり詰め込む作業は、夏の風物詩でした。
翌朝の「補液が足りなかった」だけは、絶対に避けたい。
補充は念入りに、いつもより多めに——これは習慣というより生存戦略です。
17:15|帰宅(当直日は別)
追加の呼び出しがなければ、定時で帰宅。
ただ、夕方に農家から電話が来ることもあります。

ゆっけ
私の診療所では当直制がきっちり決まっていて、当直じゃない日は呼び出しゼロでした。
「今日は◯◯先生の当直日」と分担表がある。
小動物臨床でよくあると聞く「全員でなんとなく対応」とは、精神的な負担が全然違います。
季節で変わる「1日の景色」
産業動物臨床は、季節で1日の中身がガラッと変わります。
同じスケジュールでも、見える景色は別物です。
「夏は暑さと脱水との戦い、冬は寒さと分娩との戦い」とよく言っていました。
年間スケジュールが体に染み込むまでは、季節の変わり目で体調を崩しがちです。
向いている人・向いていない人
5年やって感じた肌感を、正直に書きます。
向いている人
- 一人で運転する時間が苦じゃない人(むしろ好きならベスト)
- におい・血液・体液に強い人
- 農家さんと世間話ができるコミュニケーション力がある人(技術より大事と言ってもいい)
- 1日の中で自分のペース配分を作れる人(昼寝も含めて)
- 体力に最低限の自信がある人
向いていない人
- 常に清潔な環境で働きたい人
- 屋内のチームワーク重視の働き方が好きな人
- 運転が苦手・一人で長時間移動するのが苦痛な人
- におい・体液に体が拒否反応を出す人
「向き」は事前に分かりにくく、やってみて初めて気づく部分も多いです。
でも運転とにおいの2つだけは、やる前にイメージトレーニングしておくと後悔が減ります。
1日を振り返って

ゆっけ
こうやって書き出すと結構ハードに見えますが、産業動物臨床の5年間、私はわりと好きでやっていました。
体はバキバキになるし、においもすごい。
夏はとにかく暑い。
それでも「自分の手で動物の命に関わっている」という手ごたえは、臨床ならではのものだったと今でも思います。
小動物臨床と大きく違うのは、フィールドが農場と往診車というオープンな世界であること。
診察室という閉じた空間で1日中過ごすわけじゃない。
九州の田舎道を走りながら次の農場に向かう移動時間が、ある種のリセット時間になっていました。
向いている人にとっては本当に面白い仕事で、向いていない人にとっては体が持たないかもしれない。
どちらなのかは、やってみるまで分からない部分もあります。
他の転職先と比べたら、産業動物獣医師はどこに位置する?
獣医師の主な転職先を、ワークライフバランス・給与・採用ハードルの3軸で比較するとこんな感じです。
| 転職先 | ワークライフバランス | 給与 | 採用ハードル |
|---|---|---|---|
| ⭐ 産業動物獣医師 | △(当直あり) | ○(2年目以降アップ) | ◎(低い) |
| 地方公務員 | ◎ | △ | ◎(低い) |
| 製薬会社 | ○ | ◎ | △(やや高い) |
| 食品関連企業 | ○ | ○ | △(やや高い) |
| 一般開業医(小動物) | △ | ○ | ◎(低い) |

ゆっけ
産業動物の強みは「採用ハードルが低い+2年目以降の給与が伸びる」こと——地域選びさえ間違えなければ、年収600〜700万円も狙えます。
一方で当直の有無や運転距離は診療所で大きく変わるので、見学で必ず確認してください。
※ これは私の経験に基づく一例です。地域・診療所・担当エリアによって1日のスケジュールや業務内容は大きく異なります。






